急性中耳炎
原因は?
耳と鼻をつなぐ管(耳管)を介して、中耳腔(鼓膜の内側)に細菌やウイルスが入り、急性の炎症を起こすことが原因です。こどもの耳管は大人と比べて太く短いため、鼻やのどの細菌・ウイルスが中耳腔に入りやすく、こどもに多い病気とされています。好発年齢は生後6ヵ月~2歳です。2歳を過ぎると罹患回数は減り、7歳以降では更に罹患頻度は下がります。7歳までに60~70%のお子さんが罹患するとされています。
症状は?
耳痛(70%)・発熱・耳漏(耳だれ)(10%)などを認めます。
乳幼児の場合は、「突然泣き始める、不機嫌、耳を触る、ミルクの飲みが悪い」などの症状しか認めないこともあります。
中耳炎が悪化すると、急性乳様突起炎・髄膜炎・脳膿瘍などを来すことがあります。
診断は?
症状と鼓膜所見(鼓膜の膨隆・発赤など)で診断を行います。耳の中(外耳道)に耳あか(耳垢)が多く、鼓膜を診察することが困難な場合は耳鼻咽喉科をご紹介とさせて頂きます。
治療は?
重症度に応じて治療内容が異なります。
- 軽症の場合、3日間は無治療で経過観察とし、3日後に改善が乏しければ、抗生剤の内服加療を行います。
- 中等症以上の場合、3日間の抗生剤内服加療を行い、治療効果を判定します。
治療効果に応じて抗生剤投与継続・鼓膜切開の必要性を検討します。必要に応じて耳鼻咽喉科をご紹介とさせて頂きます。
反復する中耳炎の場合、漢方薬(十全大補湯)が予防に有効とされています(小児急性中耳炎診療ガイドライン)。
副鼻腔炎(ちくのう症)
原因は?
ウイルス感染・細菌感染・アレルギーなどによって、副鼻腔(顔の骨の中にある空洞)で炎症が起こることが原因です。
症状は?
黄色い鼻水(膿性鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、痰が出る(後鼻漏)、咳嗽、頭痛、顔の圧痛(顔の骨を押すと痛い)など多彩な症状が出ます。
症状の持続期間により急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分けられます。
- 発症から4週間以内なら… 急性鼻副鼻腔炎
- 発症から3ヶ月以上なら… 慢性鼻副鼻腔炎
長引く咳(慢性咳嗽: 咳が8週間以上続く)の原因となります。
診断は?
臨床症状や単純レントゲン写真(Waters法)、鼻腔培養検査などで診断します。アレルギー性鼻・副鼻腔炎の場合は、必要に応じてアレルギー検査を行います。
治療は?
自然治癒することがあり(60%前後)、抗生剤投与には検討を要します。重症度に応じて抗生剤の投与を行います。必要に応じて高用量の抗生剤投与(7~10日間)を行います(ペニシリン系抗生剤など)
慢性鼻副鼻腔炎で高用量抗生剤投与等が無効であった場合、マクロライド系抗生剤を少量持続投与(8~12週間)を行います。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎ってどんな病気?
- 季節性アレルギー性鼻炎:花粉症のようにある時期だけ症状が出る季節性のアレルギー性鼻炎、鼻粘膜にアレルギー物質(花粉,ハウスダスト,ダニなど)が付着し、くしゃみ・鼻汁・鼻づまり(鼻閉)といった症状を認めるアレルギー疾患です。
- 通年性アレルギー性鼻炎:一年中あるアレルギー物質(ダニやハウスダストなど)のせいで症状が出るアレルギー性鼻炎
症状は?
くしゃみ・鼻汁(サラサラした鼻汁)・鼻づまり(鼻閉)を主な症状(3主徴)とします。その他に眼症状(痒み/充血)、のどの症状(イガイガする/違和感)、耳症状(耳の中の痒み/閉塞感)、呼吸症状(乾いた咳/しゃがれた声)なども認めます。
診断は?
臨床症状から診断することがほとんどですが、必要に応じて血液検査(特異的IgE抗体測定)や皮膚プリックテストなどを行います。
当院では迅速検査(イムノキャップラピッド)でアレルギー検査を行うこともあります。(鼻汁中好酸球の有無を評価することもあります)
治療は?
アレルゲンの除去・回避が治療の基本となります。必要に応じて抗アレルギー薬内服(抗ヒスタミン薬・ロイコトリエン受容体拮抗薬など)、点鼻薬(鼻噴霧用ステロイド薬)で治療します。アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)という新しい治療もあります(長期間(年単位)の舌下投与が必要です)。
先天性耳瘻孔(じろうこう)
どんな病気?
先天性耳瘻孔とは、生まれつき耳(耳介)の周囲に小さな穴が開いている病気です。浅い窪みだけのこともあれば、1~2cm程度の深さがあるものもあります。内腔には皮脂を分泌する皮脂腺があり、内腔に分泌物などが溜まると腫脹し、圧迫すると悪臭のする白黄色の粥状のものが排泄されることがあります。発症頻度は0.7~7.8%といわれ、比較的頻度の高い疾患です。
穴が開いていても大丈夫?
浅く感染を起こさない多くの先天性耳瘻孔は無症状に経過するので、治療の必要はありません。ただし、感染を一度引き越した場合は、感染を繰り返すことが多く、切開・排膿では完治しないので、完全に瘻孔部を手術で摘出することを検討します。赤く腫れたり、痛みを訴えるなどの症状を認めた場合は医療機関でご相談ください。
先天性鼻涙管閉鎖
どんな病気?
涙の通り道(眼の涙腺という組織で作られた涙は、鼻涙管を通って鼻の中に流れ出ます)の一部が閉塞してしまっている病気です。
生まれたばかりのあかちゃんでは、6~20%で鼻涙管閉塞を認めるとされており、比較的頻度の高い病気です。
症状は?
流涙(涙が多い)と眼脂(目ヤニ)といった症状を認めます。
ほとんどの場合、「生まれてからずっと涙が多い・目ヤニが多い」「朝起きた時に目ヤニがびっしりある」などの症状で小児科や眼科を受診されることが多いです。
1歳までに83~93%が自然治癒するとされています。
月齢や年齢が上がるにつれて自然治癒する可能性は低くなっていくので、自然治癒しない場合は眼科での診察が必要です。
治療は?
自然治癒する可能性が高い病気ですが、自然治癒しない場合は以下のような治療を検討します。
☆ 保存的治療(6ヵ月未満):目薬(抗菌薬)と涙嚢(るいのう)マッサージ
☆ プロービング(6ヵ月~1歳):涙道ブジー(プローブ)を眼がしらの涙の出口から挿入して、閉塞部を穿破する方法です。
☆ 涙道内視鏡検査/涙管チューブ挿入術/涙嚢鼻腔吻合術など
保存的治療で改善しない場合は、眼科へのご紹介とさせて頂きます。
涙嚢(るいのう)マッサージって何?
医師の指導のもと、先天性鼻涙管閉塞の改善を目的とした家庭で実施可能なマッサージです。
眼がしらの周囲を人差し指で圧迫するようにしてマッサージを行います(3~4回/日)が、医師の指導を受けてから行うようにしてください。
耳垢塞栓
耳あか(耳垢:じこう)って何?
耳あかは、耳の中の皮膚の角化表皮細胞や脱落した耳毛などが混在したものです。
耳垢塞栓って何?
耳あかは、耳の中の自浄作用によって自然に耳の外に排出されるようになっています。
綿棒などによる耳掃除で耳あかを奥に押し込んでしまうことなどが原因となり、耳垢塞栓になってしまいます。
症状は?
耳あかが耳の中(外耳道)で詰まってしまい、耳閉感・掻痒感・耳痛・耳鳴などの症状を認めます。
クリニックなどで中耳炎を評価しようとした際に、偶然に発見されることもあります。
お子さんの約10%に見られ、耳の中(外耳道)が狭いことがこどもに多い原因と考えられています。
治療は?
症状(耳閉感・掻痒感・耳痛・耳鳴)を認める場合や中耳炎の評価が必要な場合は、耳垢の除去を行いますが、耳垢を取り除く際に鼓膜を損傷してしまう可能性があるため、当クリニックでは耳垢の除去を行っていません。
耳垢の除去が必要と判断させて頂いた場合は、耳鼻咽喉科をご紹介とさせて頂いております。
症状がなく、中耳炎の評価も不要な場合は、耳垢は自然に耳から出てくる可能性があるので耳垢の除去は不要です。
耳掃除についてですが… 耳垢は自然に耳から出てくるので週1回~月1回、目視できる耳垢を拭きとる程度で構いません。