いちご状血管腫(乳児血管腫)

いちご状血管腫について

いちご状血管腫(乳児血管腫)とは?

皮膚表面や内部にできる「赤あざ」の一種です。見た目が赤く、いちごのように見えることから「いちご状血管腫」と呼ばれます。未熟な毛細血管が増殖することで現れる良性の腫瘍です。女の子に多いとされています(男の子:女の子 = 1:39)。また、日本人での発症頻度は0.81.7%とされており(100人に1人程度)、決して少なくない病気です。

どんな経過になる?

生後2週頃より現れ、生後57で急速に大きくなります。生後5ヵ月までにはピーク時の80%の大きさに達すると報告されています。

多くの場合(90%以上)57歳までに数年かけて少しずつ赤みは消えていきますが、多くの場合、痕(瘢痕)などの後遺症が残ります。ある報告(いちご状血管腫 184個を対象に調べたデータ)によると、毛細血管拡張(84%)、皮膚の萎縮(33%)、皮膚のたるみ(16%)、瘢痕(12%)を認めたとされています。報告されているデータによって差はありますが、軽症の後遺症を含めると2568%で後遺症が残ると言われています。

どのような形・大きさ?

角のない丸みを帯びてる形で、円形や楕円形など、1㎝以下の小さいものから10㎝以上の大きなもの、広範囲に及ぶものがあり、形はさまざまです。血管のある場所ならどこにでもできる可能性があります。皮膚表面だけではなく内臓にできることもあり、顔面や頭部など首から上に多く現れます。1カ所にできることが多いですが、複数カ所できる場合もあります。

どんな治療法がある?

前述のように無治療でも数年かけて赤みは消えていくので、何もしない(自然退縮を待つ)という選択肢もあります。

自然退縮を待つという治療法以外には、薬物療法(へマンジオルシロップ、ステロイド療法(日本では承認外治療)など)、手術療法、レーザー治療、塞栓/硬化療法、液体窒素療法、持続圧迫療法などがあります。現時点では(血管腫・血管奇形・リンパ管奇形 診療ガイドライン2017)、ヘマンジオルシロップによる薬物療法が治療の第一選択肢として推奨されています。当院では、ヘマンジオルシロップによる薬物治療を行うことが可能です。

すべてのいちご状血管腫に治療が必要?

小さな病変は自然に消失する可能性があることと、治療には少なからず副作用を引き起こす可能性があることから、全てのいちご状血管腫が治療対象とはなっていません。

治療ガイドライン上、生命や機能に重大な問題をきたす可能性が高い場合、または、部位・大きさ・症状から整容的な問題がある場合には治療が推奨されています。

瘢痕が残っても気にならない場所・大きさの血管腫の場合、治療は推奨されていません。また、明らかに消失傾向になっている場合も治療は推奨されません。

早めに治療を開始した方がよい場合は?

乳児血管腫が、鼻や口、首などにできた場合、気道や食道を圧迫してしまう場合、眼や耳に近い場所で感覚器に影響を及ぼす場合、お子さんの発達や機能に障害を及ぼす場合、急激に血管腫が大きくなった場合、出血しやすい・ただれやすい場合には、早期治療が必要です。

へマンジオルシロップってどんな薬なの?

へマンジオルシロップは、血管腫の増殖を抑制し、血管腫が小さくなるのを速める効果が期待できる治療薬です。主成分は、プロプラノロール(β遮断薬)1960年頃から高血圧症や不整脈の治療に広く使われてきた薬です。

日本では、20167月に厚生労働省より承認がおり、いちご状血管腫の治療に使用されるようになりました。入院管理下で治療を開始することもありますが、外来管理下で治療を開始することも可能です。当院では外来管理下で治療を開始しています。

ヘマンジオルシロップの内服治療ってどうやる?

下記のステップで治療を行っていきます。

  • ①初回の外来受診にて治療適応の必要性を判断します。治療の必要性があると判断させて頂いた場合、ヘマンジオルシロップの副作用などをご説明し、ご家族のご了承があれば、次回、外来受診時より治療を開始します。
  • ②2回目の外来受診時に治療を開始します。ヘマンジオルシロップ内服前に事前検査(心拍数測定・血圧測定・血糖値測定など)を行います。事前検査を施行後、クリニック内でヘマンジオルシロップを内服し、1時間毎に心拍数などの測定を行います。院内での経過観察後(少なくとも2時間)、ご帰宅して頂きます。
  • ③3回目の受診時にヘマンジオルシロップの増量を検討します。増量する場合は、2回目の受診と同様に事前検査と内服後の評価(血糖値測定など)が必要となります(2回目と同様に数時間の院内待機が必要になります)。
  • ④4回目の受診時もヘマンジオルシロップの増量を検討します。3回目の受診と同様のステップを踏むため、数時間の院内待機が必要となります。計3回の増量以降は、体重増加に応じて随時、内服量を調整していくことになります。
  • ⑤内服開始後から24週間後(6ヵ月後)に治療の終了を検討します。24週間の内服治療で60%のお子さんで明らかな治療効果があると報告されています。

ヘマンジオルシロップの副作用ってどんな副作用?

低血糖、心拍数低下、低血圧などの重篤な副作用を起こす可能性があります。

ある報告(いちご状血管腫患者1198例の検討)では、低血糖 0.3%、心拍数低下 0.8%、低血圧 3.7%を認めたと報告されています。こういった副作用を回避するためにも定期的な受診と内服時の注意点がいくつかあります。必ず医療機関でよくご相談ください。

また、ヘマンジオルシロップには気管や気管支を狭くする効果もあるため、気管支喘息を悪化させたり、呼吸困難をひき起こす可能性もあります。それ以外にも、下痢、不機嫌、睡眠障害、嘔吐などの副作用もあります。

ヘマンジオルシロップの内服治療を開始する前に医療機関でよくご相談ください。

ヘマンジオルシロップの内服治療のその他の注意点はありますか?

いちご状血管腫(乳児血管腫)は、治療途中においてほぼ治ったと見た目で判断できたとしても、再び症状が再発することがあります。したがって、治療効果を得るためにも、ご家族の判断で治療を中断しないよう注意が必要です。

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